日仏の児童相談所の役割の比較&フランスの近年の傾向と課題

フレデリック・ラファネル

パリ市の北にあるセーヌ・サン・ドニ県ボンディ市の児童相談所チームの心理士。

15人のチーム、すべての市に児童相談所チームがある。ボンディ市では230人のこどもを担当(里親が他の自治体の場合も)。

チームの構成は責任者1名、心理士2名、エデュケーター10人、事務2人。

危険な情報が保育園、病院、学校などから心配な情報統括部署に入ると、子ども専門

裁判所検事が24時間以内の保護の命令を出し、児童相談所のエデュケーターが子どもを迎えに行き、一時保護受け入れ先に連れて行き、エデュケーターと心理士で子どもに理由を説明しどう受け止めているかを聞く(2週間以内に子ども専門裁判官が裁判を開いて今後の対応を決めるため、エデュケーターたちはそれまでに子どもと親と十分話し子どもがどのような日常を過ごしているのか、関係性を把握し、学校や医療機関など同居しているすべての子どもの関係者から情報収集し報告書を裁判官に提出する)、裁判で親子分離が決まったら子どもと施設や里親など受け入れ先を探し、それから先は子どもの経過見守りと親支援をする。原則短期措置しかせず半年か一年ごとに裁判をして対応を見直す(児童相談所のエデュケーターは最初毎日、落ち着いてきたら週一回から月2回子どもと会う機会をつくる)。

児童相談所の心理士は親子分離を経験している子どものフォローをおこなう。家族会議開催の際は、事前に子どもに自分が頼りにしたい親族、知人、里親などの名前をあげてもらいそれぞれに連絡をして、それぞれが子どものためにできることを子どもの前で宣言する家族会議をおこなう。里親宅に措置されることになった子どもについては里親が実親から使っている洗剤や好きな食べ物などを聞き、実親宅との日常の継続性に配慮する。子どもがケアを受けられるような場所、セラピストにつなぐ、里親宅で子どもが気持ちよく過ごせているか、話したいことがないかなど調整をする。

 

児童相談所エデュケーターたちに子どもたちが話しやすくするため、スキー合宿や文化的アトリエや季節のパーティー(児童相談所職員の子どもたち、里親たち、実親たちも参加)などを開催する。教育的滞在(エデュケーターと子どもが二人で3か月間毎日巡礼路を歩くなど)をすることもある。


安發明子(在パリ 通訳・コーディネーター・ライター)

・問題が起きる前に家庭を支える、問題が起こることを防ぐ方がコストがかからない。

・女性の就労を支えられれば、子どもの貧困は減り、社会保障費も減る。

1人の子どもにかかるコストは在宅支援が月54000円、施設保護は月70万円(日本では年間500万円)。

・そもそも子どもに嫌な経験をさせない「心配」基準を設け、専門職が判断する。

・アセスメントではなく、「心配」が無くなるまで親を具体的に支える在宅支援を行う。

・子どもが週2、3回学校帰りに通う日中受入機関を設ける(例えば子ども35人に専門職が17人)。攻撃的、人間関係でモメるなど課題がある子どもが3-6ヶ月で克服するための集中ケア。

・早期発見(学校や学童など子どもと接する人は児童保護の役割も果たす)と早期対応(要支援は専門の民間団体に委託することが多い、必ず有資格者が対応)

・パリ県では未成年人口の2%、8782人を児童保護フォロー、予防は453973人うち在宅教育支援(同意あり)AED1549人、在宅教育支援(司法決定)AEMO2205人、日中入所SAJE219人、保護は554809人で自宅措置(専門職が毎日通う)PADと施設・里親・アパートに分かれる。

・日本でできることの提案として児童相談所を3つのチームで対応:

予防チーム 関係機関の相談にのる、

緊急対応チーム SOS対応、緊急一時保護内に措置決定、3か月の集中支援、

経過チーム 親子分離している子どもの経過と親支援、家庭復帰後1年間経過まで、114家庭(月140時間)を在宅教育支援

・日本の福祉職は大学4年のうち実習は180時間~と短い。フランスは入学倍率6倍の福祉専門学校に3年間、実習2100時間と長い。

・フランスの施設や里親措置は平均1年半。1年半で済めば、日本の計算なら750万円。だけど日本は平均な措置期間が5年。つまり、2600万円かかっている。3歳から18歳までなら7500万円。在宅支援で防いだら1年半97万円で家族全員を支えられる。

・親子まるごと支援で分離を防ぎ、早期に家庭復帰できるようにすることが必要。